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コンサル出版!『出版セミナーで目からウロコだったことのいくつか』 第189号

配信日:2013年02月18日

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《今週のCONTENTS》

1.『出版セミナーで目からウロコだったことのいくつか』

2.今週のおすすめビジネス書
  『長く繁栄する同族企業の条件』(日本経営合理化協会)

………………………………………………………………………………

「出版セミナーで目からウロコだったことのいくつか」


おはようございます。
本多泰輔です。

先週の2月13日、久しぶりの「出版セミナー」を行いました。
寒風吹きすさぶ中、ご来場いただきました方々、ありがとうござい
ました。改めまして御礼を申し上げます。

今回のセミナーでは、わたくしめの出番はなかったのですが、一聴
衆としてなかなか面白く聞かせていただきました。

そこでこのメルマガでは、ご来場いただけなかった人のために、ほ
んの少しだけわたしの印象に残ったお話として、そのさわりをご紹
介したいと思います。

ただし、あくまで本多の独断と偏見による解釈ですので、その辺お
含み置きください。


■泣けるビジネス書をつくる!

まずはセミナーの第1部から。
第1部の講師をお願いしましたあさ出版の佐藤社長は、不肖本多と
は旧知の間柄なのですが、なかなか心に響くお話でした。

記憶では、あんなに話が上手な人ではなかったのに、歳月はやはり
大きく人を変えるものだ、とまあ、いささかの感慨を覚えながら聞
いていたわけです。

あさ出版のベストセラー、『日本で一番大切にしたい会社』(坂本
光司著)がなぜ多くの読者に受け入れられたのか、要するにたくさ
ん売れたのか、その理由は2つあるということです。

本当は、もっとたくさんあるでしょうけれども、今回のお話ではこ
の2点に絞ってのお話でした。

理由その1。
経営者は経済的な成功を目指して事業を始めることが多い。ベンツ
がほしい、立派な家に住みたい、お金もたくさんほしい、こうした
動機が経営者のエネルギー源となり成果に結びつくわけですが、そ
れだけではない。

自分自身の物質的欲求がある程度満たされると、人は社会貢献や社
員の福利厚生など、他人の幸福に関心が向くようになる。

ここにこの本が売れた背景があるということです。

佐藤社長の見立てでは、『日本で一番・・・・』が経営者の持つ
「できることなら社会貢献したい」という意識に響いた、あるいは
眠っている社会貢献の意識がインスパイア(鼓舞する)されたから
ではないかということです。

『日本で一番大切にしたい会社』がどういう本か、その中身をご存
じない方は、買って読んでいただくか、書店で立ち読みしていただ
くしかありませんが、つまりは「人を大事にしている会社」のお話
です。

「お父さんが泣けるビジネス書」をつくりたいと、佐藤社長はずい
ぶん前(たぶん6,7年くらい前)に言ってました。

わたしは「そりゃ、重松清の仕事でしょ。ビジネス書で泣けますか
ね」と冷ややか(この時に限らず、いつも冷ややかですが)に応じ
ていました。

今回のセミナーでお話を聞いて、改めて『日本で一番大切にしたい
会社』の原点が、この時に話にあったのだなとしみじみ思いました。

マズローの法則は企業経営にもあった

このお話を聞いて思いついたのが「マズローの法則」。
欲求の5段階説ですね。

企業経営も個人と同様に5段階の欲求があると、まあ、わたくしは
そう考えたわけです。

マズローの欲求5段階説では、ボトムの欲求は「生存の欲求」。
企業経営では倒産しないことがすべての前提ですから、これはわか
りやすい。

その一段階上が「安全の欲求」。
倒産しないまでも、いつも翌月の資金繰りに悩むような自転車操業
では、とても安心してできません。安定経営という安全を求めるの
も極めて至当です。

ここまで達成されれば、経済的、物質的欲求は概ね満たされそうで
す。そうして、次の欲求の第3段階目から、自分のことから他人の
ことへと関心が向くようになるわけです。

マズローの法則では第3段階は「所属と愛の欲求」です。
これは・・・・、う〜ん「社員満足」でしょうか。
社員から「ドケチ社長」とか「かまどの灰まで自分の物」などと言
われたくなくなるのが、この段階なんですかね。

日本経団連の社長さんたちも、早くこのレベルに達してほしいと、
たぶん総理大臣もそう思っていることでしょう。

「愛の欲求」とあるように、社員は社長に忠実であれという欲得が
らみの思いから、社員を愛したいという心情へと移るのか、あるい
はもうすこし下心があるのか、果たして社長のみなさま、実際のと
ころどうお考えでしょうか?

さて、第4段階は「承認・尊重の欲求」、エステマですね。
これはもう「立派な経営者」と世間に認めてもらいたいというわか
りやすい欲求でしょう。このころから商工会議所の理事や役員にな
ろうとしたり、銀行の懇話会なんかに入って、ゆくゆくは商工会議
所の会頭や懇話会の会長などを目指し、社外活動をし始めるのだと
思います。

本の出版なんかもするんでしょうね。

そして、マズローの欲求5段階のトップの欲求は、もはや知らない
人はいない「自己実現」。マズローは知らなくても、いまやこの言
葉を知らない人はいませんね。

しかし、第4段階までは順調に企業経営とフィットしてきましたが、
自己実現はやや解釈しづらいところがあります。

そもそも自己実現を目指して会社を起こす人が多いのですから、物
質欲から順番に精神欲、まで積み上げていって最後が自己実現とな
ると、なんだかすごろくで「振り出しに戻る」みたいな気もします。

そこで、メルマガの主題ではありませんのでという言い訳を用意し
て、ここでは自己実現についてこれ以上は踏み込みません。


■すべてのベストセラーは「いい話」

個人の生活でも企業経営でも、マズローの法則がいつもぴったり当
てはまるかは正直わかりません。

しかし、ビジネス書が必ずしも欲求の第1段階や第2段階ばかりを
テーマにする必要はないのではないか、つまり損得や効率ばかりを
テーマに取り上げることはないのかもしれない、ということを
『日本で一番大切にしたい会社』と佐藤社長は教えてくれたのだと
思っています。

そういうわけで理由のその2です。

「人はいい話で感動(あるいは感心)したい」

ベストセラーを見渡せば、究極ベストセラーとは「いい話」の本。
小説はそもそも「いい話」を捏造することが本筋ですから、いまさ
ら言うまでもないことです。

小説『下町ロケット』(池井戸潤著 小学館)は蒲田の中小企業の
「いい話」、コミック『ワン・ピース』(尾田栄一郎著 集英社)
は海賊の「いい話」、一般書『だから、あなたも生き抜いて』(大
平光代著 講談社)は暴力団から弁護士なった女性の「いい話」、
詩集『くじけないで』(柴田トヨ著 飛鳥新社)は98歳のおばあ
さんの「いい話」、そしてビジネス書『日本で一番大切にした会社』
はビジネスの「いい話」です。

「いい話」というのは、要するに「感動する」か、「感心する」お
話ということです。
ドラッカーは、言わば経営のいい話。ビジネス書は基本、経営書が
ベースなので、勢い損得や効率をテーマにすることが多い。そこに
感心はあっても、なかなか感動することはありません。

ビジネス書『日本で一番・・・・』では、そこをあえて「感心より
感動」を目指したのですね。そのチャレンジが凄いと思います。


■感動するビジネス書を目指す時代

よくよく見ればベストセラーのほとんどは「いい話」です。
ならば、ビジネスで感動のいい話があれば、それは十分ヒットする
可能性を持っているわけです。

しかし、残念ながらビジネス書の多くはプラグマティックであり、
功利的であり、損得勘定であって、感動とは最も遠いところにある
とさえ言えます。

それはそれで、間違いでも不要でもありません。

しかし、それだけがビジネス書ではない。なぜならビジネスシーン
にも、感動はあるからです。しょっちゅうあることではないですが、
それは人生でも同じこと。

それにめったにないからこそ、本にする意味があるというものです。

個人個人はビジネスで感動することがあるのに、ビジネス書がそこ
を避ける理由はありません。

とまあ、昔から思っていたんですが、なかなかできないんですね、
これが。

ビジネス書にも「感動のナントカ」とかというタイトルは時々あり
ます。しかし、その中身はだいたい教条主義的であり表面的であっ
て、どう読んだって感動しようがない、そういうものばかりです。

「感動のナントカ」と『日本で一番・・・・』の違いは何か、一つ
は共感できるかどうかでしょう。

マズローの欲求段階で3段階以上の人は、『日本で一番・・・・』
に共感し得た、だから「感動のいい話」として、多くの人に読まれ
たのであろうと思います。


■データが語る読者の姿

第2部の日経BPコンサルティングの今野さんと安藤さんのお話で
は、日経BPの媒体読者に対し行われたアンケート結果に注目しま
した。

約1万人のデータを出してくれたのですが、その中で瞠目したのは
次の2点です。

一つは、読者がビジネス書を選ぶときにどういう規準で選んでいる
かというデータ。

読者は同じようなジャンルの本の中から一冊を選ぶ時、その本を書
いた著者の名前(有名人)で選ぶのではなく、著者の経歴や専門性、
つまりその本を書くのに妥当性のある経歴の人物かどうかで選んで
いるという点です。

これは文芸書には見られない傾向で(わたしは文芸書のことは知り
ませんが、文芸書の出版社の人に聞きました)、新人の著者にとっ
てビジネス書や実用書が持つアドバンテージであると言えます。

つまり、ビジネス書は無名の新人作家であってもまったくOKとい
うことです。株の本を書く人は実際に株式投資をやった人であれば
いいわけで、証券会社OBである必要はなく、博士号も要りません。

株で億万長者になった人でなくても(あってもいいですが)いい。
地味ではあっても、主婦が小金を貯めて持続的に数百万円ずつ増や
し続けているという話でもOK。80歳オーバーのおばあさんが年
に百万ずつ儲けを出し続け、ついでに健康維持、認知症防止にも効
果ありということでもいいわけです。

もう一つの“瞠目点”は、タイトルに関するデータです。
本を選ぶときに読者が最も見ているのがタイトル、次が目次です。
本を手に取らなきゃ目次も前書きも読めやしませんから、本のセー
ルスにとってタイトルはやはり一番大きいというデータでした。

そりゃまあそうでしょうという話ではあるのですが、本当にタイト
ルで選んでいるか調べたことはありませんでしたので、データで見
せてもらうといまさらながら感心してしまいました。


■やはりセミナーはライブで!

もしも『日本で一番・・・・』のタイトルを「感動の経営! 」な
んてつけていたら、恐らくベストセラーになるまでに、もう半年く
らい余計にかかったろうと思います。

上手なタイトルつけるセンスというのは、編集者の、そして出版社
の財産ですね。出版社を選ぶ時にはタイトルセンスのいい会社を選
んだほうが、規模の大小で選ぶよりも大事かもしれません。

そんなわけで、個人的にもいろいろ啓発を受けるところ大であった
セミナーでありますが、あんまりここで詳細を書いてしまうと講師
の方々の著作権を侵害してしまいますので、この辺で打ち止めとさ
せていただきます。

いずれにせよ、やはりセミナーはライブで聞かれたほうがよいとい
うことで、今回のメルマガも締めさせていただきます。


では、また・・・(いずれ)。


《このメルマガのバックナンバーはこちら》
http://www.keieido.net/publish-mag.html?mgk130218

………………………………………………………………………………

☆☆今週のおすすめビジネス書☆☆

『長く繁栄する同族企業の条件』西川 盛朗著
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120年以上発展を続ける同族企業ジョンソン社の経営者だった
著者が、同族企業(ファミリービジネス)の脆(もろ)さと強さを
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《編集後記》
2年ぶりに開催されたコンサル出版セミナー。ご参加された方にと
ってご感想はそれぞれだったと思いますが、少なくとも「本を出し
ていく」という動機付けは強くなったのではと思います。私もこれ
まで数多くのコンサルタントの方が著書をきっかけにメジャーにな
っていった様子を見てきました。やはり「本を出し続ける」という、
強い意志が、行動、実現、継続に繋がっているのだと痛感します。
(発行者:樋笠)

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