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「顧客の専門家」マインドリーディング入門
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【マインドリーディング入門】ホームゲームの勝率が高い本当の理由とは?
配信日:2012年08月15日
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「顧客の専門家」を目指そう!
マインドリーディング入門
2012年08月15日
No.867
Written by 松尾 順
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●ホームゲームの勝率が高い本当の理由とは?
多くの競技スポーツにおいて、
地元で行なわれるホームゲームの勝率は、
敵地で行なわれるアウェイゲームよりも高い。
これは明確に数字として示すことのできる事実ですが、
地元開催だと、ホームチームが勝つことが多くなるのは
なぜでしょうか?
よく言われる理由としては、
以下のようなものがありますね。
-------------------------------------
・アウェイチームは遠征の長旅で疲れているから
・アウェイのゲームはしばしば過密日程になりがちで、
アウェイチームの疲労が蓄積されやすいから
・地元のファンの熱心な応援、あるいは恫喝(笑)で、
ホームチームのやる気が高まるから
--------------------------------------
ホームチームが勝ちやすい理由はどれかひとつに
絞られるわけではありませんが、直感的に一番影響が
大きいと思われるのは、やはり、
「地元ファンの応援」
でしょうか?
ところが、シカゴ大学ビジネススクール教授、
トビアス・J・モスコウィッツらが、サッカーやアメフト、
野球、アイスホッケー、バスケットボールなど、
過去数十年に及ぶ膨大な試合データを緻密に分析したところ、
上記3つの理由のどれも、ホームチームの勝率に影響を
与えているという結果は得られなかったのです。
では、何がホームチームの勝率を押し上げていたのでしょうか。
それは、審判の「地元びいき」的な判定だったのです。
ホームゲームとアウェイゲームで比較すると、
ホームチームに有利な判定が下されやすく、
一方アウェイチームに不利な判定が下されることが多い
ということが数字として明確に現れてきた。
例えば、野球で言えば、
ホームチームのバッターは見逃し三振が少なく、
フォアボールが多くなるのだそうです。
ストライクかフォアボールかは、
最終的には審判の主観的な裁量に委ねられています。
もちろん、誰が見ても明らかなストライク、
あるいはボールには、主観的判断はほとんど入り込めません。
しかし、ストライクかボールのどちらか微妙なコースの時、
審判は‘無意識に’ホームチームに有利な判定をしてしまう。
つまり、「ボール」とコールすることが多くなるため、
見逃し三振が減り、フォアボールが増える。
サッカーでも、
過去試合データを分析してみたところ、
アウェイチームがファウルを取られる数が
増えることがわかっています。
とりわけ面白いのが
「追加タイム(ロスタイム)」
の違いです。
追加タイムは、選手交代や選手の負傷などによるゲーム
の中断時間を主審が裁量し、任意に決定できるゲーム
延長時間ですね。
過去の試合データの分析によれば、
ホームチームが1点勝っている時の追加タイムは
平均で「2分」ちょっと。
逆に、ホームチームが1点負けている時の
追加タイムは平均で約「4分」と、ホームチームが
勝っている時の2倍の長さになるのです。
素直に考えると、ホームチームが勝っている時は、
速やかにゲームを終わらせたい。逆に、負けている時
は、できるだけゲームを長引かせ、ホームチームに
得点のチャンスを与えたいという意図が主審にあると
しか思えないですね。
しかも、1点差の接線でない場合、
つまり2点以上の差でどちらかが勝っている場合、
追加タイムは、常にほぼ一定した長さで違いが
ないのだそうです。
これは、追加タイムで2点以上の差を埋めるのは、
さすがに難しいと主審が判断しているからだろうと
推測できます。
さて、審判の方々の名誉のために解説しますが、
実のところ、審判は、明確に意図して「地元びいき」
の判定・裁量をやっているわけではありません。
審判の方々はできるだけ公明正大にプレーを
見極め、正確な判定をしようと心がけているのです。
それでも、結果として「地元びいき」になってしまう
理由は、モスコウィッツ教授らの分析によれば、
「集団への同調圧力」
の影響だと考えられています。
ホームゲームでは、地元ファンの目が多い。
みな、ホームチームが勝って欲しいと願っている。
彼らは始めから「地元びいき」です。
微妙なプレーは常に、ホームチームに有利な
判定になることを望んでいるわけです!
そうした雰囲気を感じている審判は、
‘無意識’に、ホームチームに対して有利な判定を
してしまいがちになるのです。
つまり、ホームゲームの観衆の「総意」とでも
言えるものに、審判も無意識に同調してしまうというわけ。
逆に、総意に反する判定はとてもやりにくい。
ストレスを感じてしまう。
実際、ホームチームに不利な判定をした審判は、
地元ファンから大きなブーイングを受けることも
少なくないわけですから。
なお、ホームチームの勝率に審判の判定が影響を
与える大きさは、審判の主観による判定部分が多い
サッカーやバスケットボールなどで大きく、
主観的な判定部分が相対的に少ない野球などでは、
小さくなります。
この分析も、審判が「集団への同調圧力」を受けて、
主観的な判断にはバイアスがかかりやすいことを
裏付けるものと言えますね。
オリンピックでも昔から
「主催国効果」(主催国選手が活躍することが多い)
があると言われてきています。
今回のロンドンオリンピックでも、
英国のメダル獲得数が大きく伸びました。
果たして、オリンピックの審判員にも、
なんらかの心理的バイアスが生じたのかどうか、
分析してみると面白そうです。
(オリンピック審判員の方々のスキルや公明正大さに
疑問を呈する意図はないことをご理解ください!)
*参考文献
『オタクの行動経済学者、スポーツの裏側を読み解く』
(トビアス・J・モスコウィッツ、L・ジョン・ワーサイム著、
望月衛訳、ダイヤモンド社)
http://www.amazon.co.jp/dp/4478015449/sharpmicojp-22/ref=nosim
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