武士道・一日一話

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【武士道・一日一話】 No.16

配信日:2009年08月03日

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     武士道・一日一話 
                  2009.8.3     No.16
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武士道。それは日本人が本来持っている立派な人になるために必要なマナー。
私たちが生きていくうえで必要な振る舞いや責任について考えるためにため、
そして美しく、気高く生きるために、古の人たちの言葉を通して、私たちの心
をもう一度見つめなおす機会を持ちたいと思っております。


《おもな内容》・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1.【今日の言葉】 大事な思案は軽くすべし
2.【出典紹介】  「葉隠」・「葉隠入門」
3.【編集後記】


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【今日の言葉】 
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● 大事な思案は軽くすべし

 直茂公の御壁書に、「大事の思案は軽くすべし。」とあり。一鼎の註には、
「小事の思案は重くすべし。」と致され候。およそ大事と云ふは、ニ三箇条な
らではあるまじく候。これは平生に詮議して見れば知れてゐることなり。これ
を前もつて思案し置きて、大事の時取り出して軽くすることと思はるるなり。
兼ねては不覚悟にてその場に臨んで軽く分別する事も成りがたく、図に当る事
不定なり。されば兼て地盤を堅固に据ゑて置くが、「大事の思案は軽くすべ
し。」と仰せられ候箇条の基と思はるることなり。
 
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【要旨】

 直茂公の遺訓に、「大事な思案は軽くすべし。」というのがある。石田一鼎
(※)は注記して、「小さな思案は重くすべし。」と述べた。大事というから
にはそう多くなく、せめて二つ三つの事柄であろう。このようなことは、普段
から考えておけばわかることである。だから、大事については前もって思案し
ておいて、いざというときそれを思い出して、簡単に処理する必要があるのだ。
とはいうものの、逆に日頃の覚悟が足りないと、その場に臨んで速断すること
が難しく、うまくいかないことにもなりかねない。常日頃から心を決めておく
ことが、「大事のことは軽くすべし。」といわれたことの基本になるものでは
なかろうか。

※ 佐賀の儒者。山本常朝の師

*「葉隠入門」(三島由紀夫/新潮文庫/1983)より
 「葉隠」名言抄(笠原伸夫訳)を引用、一部改訂

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【私見】

 普通の考え方であれば、「大事の思案は重く、小事の思案は軽く」であるの
に対し、なぜ、鍋島直茂の遺訓や石田一鼎の注記によって「大事の思案は軽く、
小事の思案は重く」なのでしょうか? 
 それは大事なことは言われなくても慎重に行われますが、些細なことは無造
作に行われてしまいがちだからです。行動を重んじる武士道の哲学から考察す
ると、できることから率先して行動することと解釈することもできます。慎重
さの必要なものは断行も期待されるものですが、慎重なだけで行動が伴わない
ものは臆病者と言われても仕方がありません。大事なことに慎重になりすぎて
臆病風が吹き込むと、些細なことでも手を抜いたり、小事に目をつぶることが
日常化し、そこから破綻していくことは歴史の教えるところです。
 また、「小事の思案を重く」するという概念に、「失敗学」の畑村洋太郎の
著作や爆笑問題のネタで知られるようになった『ハインリッヒの法則』いうも
のがあります。労働災害の経験則を数値化したものですが、現在はビジネスに
おける失敗発生率としても活用されてています。1件の重大災害(大失敗)の
裏には、29件のかすり傷程度の軽災害(顧客からのクレーム・苦情で明らか
になった失敗)があり、さらにその裏にはケガはないがひやっとした300件
の体験(外部の苦情がないため見逃している、認識された潜在的失敗)がある
というものです。重大災害(大失敗)の防止のためには、表面化していない潜
在的なミスや不注意の段階で対処することが必要であると言われています。
 この法則が提唱されたのが1931年。数値化されていないだけでそのよう
な概念を持っている人はたくさんいたと思われますが、17世紀の日本でもそ
のように考察する人がいたことは驚きでもあるし、裏を返せば真理はいつの時
代にも変わらないものだとも感じます。
 
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【出典紹介】 
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●「葉隠」(はがくれ)
 江戸時代中期(1716年ごろ)に出された肥前国鍋島藩藩士、山本常朝の武士
としての心得についての見解を「武士道」という用語で説明した言葉を田代陣
基が筆録したものです。

●「葉隠入門」(三島由紀夫/新潮文庫/1983)
 「葉隠」を“わたしのただ一冊の本”と心酔していた三島由紀夫が現代人に
書いた入門書です。彼の持論もありますが、「葉隠」の闊達な武士道精神を今
日によみがえらせ、現代という乱世に生きる私たちに“常住坐臥”の心構えを
説いています。


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【編集後記】           
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 まず、ここ数号ほど、私の不注意により出典紹介の欄が抜けておりました。
お詫びいたします。8月より、今までの週2回(月・木)から週3回(月・水
・金)にいたします。発行が大変になりますが、武士道に関わる文献を読んで、
どうしてもメルマガやブログに載せたいような言葉がたくさんあります。それ
を皆さんにお伝えすることで私もより勉強したいと思っております。
 日々「人に見られている意識」を心掛けて生活しています。自分の考えをメ
ルマガに書くことは自分が想像していたことよりも大変ですが、その意識を持
つことで客観性を持つことができるようになるし、知識が意識に変わるのを実
感しています。それが胆識にまで高められるように精進してまいります。
 ありがとうございます。

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【武士道・一日一話】
  発行者:菅野 惠天 (武士道勉強家)

【ブログ】 武士道・一日一話 http://nippon-bushido.seesaa.net/
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