武士道・一日一話

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【武士道・一日一話】 No.4

配信日:2009年06月18日

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     武士道・一日一話 
2009.6.18     No.4
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武士道。それは日本人が本来持っている立派な人になるために必要なマナー。
私たちが生きていくうえで必要な振る舞いや責任について考えるためにため、
そして美しく、気高く生きるために、古の人たちの言葉を通して、私たちの心
をもう一度見つめなおす機会を持ちたいと思っております。



《おもな内容》・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1.【今日の言葉】 批判の仕方
2.【出典紹介】  「葉隠」・「葉隠入門」
3.【編集後記】



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【今日の言葉】 
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● 批判の仕方

 人に意見をして疵を直すと云ふは大切なる事にして、然も大慈悲にして、御
奉公の第一にて候。意見の仕様、大いに骨を折ることなり。およそ人の上の善
悪を見出すは易きことなり。それを意見するもまた易きことなり。大方は、人
の好かぬ云ひにくきことを云ふが親切のやうに思ひ、それを請けねば、力に及
ばざる事と云ふなり。何の益にもたたず。ただ徒に、人に恥をかかせ、悪口す
ると同じ事なり。我が胸はらしに云ふまでなり。そもそも意見と云ふは、先ず
その人の請け容るるか、請け容れぬかの気をよく見分け、入魂になり、此方の
言葉を平素信用せらるる用に仕なし候てより、さて次第に好きの道などより引
き入れ、云ひ様手手に工夫し、時節を考へ、或は文通、或は雑談の末などの折
に、我が身の上野悪事を申出し、云はずして思ひ当る様にか、又は先づよき処
を褒め立て、気を引き立つ工夫を砕き、渇く時水を飲む様に請合わせて、疵を
直すが意見なり。されば殊の外仕にくきものなり。年来の曲なれば、大体にて
直らず。我が身にも覚えあり。諸朋輩兼々入魂をし、曲を直し、一味同心に主
君の御用に立つ所なれば御奉公大慈悲なり。然るに、恥をあたへては何しに直
りもうすべきや。 

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【要旨】
 
 意見してその人の欠点を直す、ということは大切なことであり、慈悲心とも
言い換えられる。それは、ご奉公の第一の要件である。
 ただ、意見の仕方に骨を折る必要がある。他人のやっていることに対して善
悪を探し出すということはやさしいことで、また、それについて批判すること
もたやすい。おおかたの人は、人の好かない、いいにくいことを言ってやるの
が親切のように思い、それが受け入れられなければ、力が足りなかったとして
いるようだ。こうしたやり方はなんら役立たずで、ただいたずらに人に恥をか
かせ、悪口を言うだけのことと同じ結果になってしまう。言ってみれば、気晴
らしのたぐいだ。
 意見というのは、まず、その人がそれを受け入れるか否かをよく見分け相手
と親しくなり、こちらの言うことを、いつも信用するような状態に仕向けると
ころからはじめなければならない。その上で趣味の方面などから入って、言い
方なども工夫し、時節を考え、あるいは手紙などで、あるいは帰りがけなどに、
自分の失敗を話し出したりして、余計な事は言わなくても思いあたるように仕
向けるのがよい。まずは、良い所を褒め立て気分を引き立てるように心を砕い
て、のどが渇いたときに水が飲みたくなるように考えさせ、そうした上で欠点
を直していく、というのが意見というものである。意見というものは、ことの
ほかしにくいものと言える。誰にでも年来の悪癖みたいなものが身にしみこん
でいるので、そうすぐに直らないということは、私自身にも覚えのあることだ。
友達一同、常日頃親しくして、悪癖を直しあい、一つの心になってご奉仕に努
めるようになることこそが本当の慈悲心といえるだろう。それなのに、恥をか
かせては、直るべきものも直らないことになってしまう。直るはずもないでは
ないか。

*「葉隠入門」(三島由紀夫/新潮文庫/1983)より
 「葉隠」名言抄(笠原伸夫訳)を引用、一部改訂

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【私見】

 一言で言えば、相手に対する「思いやり」の大切さでしょうか。人に意見を
してその人の欠点を指摘してあげるのも「思いやり」、ものの言い方や振る舞
いに気を使い、相手に恥を欠かせないようにしてあげるのも「思いやり」であ
ると思います。良かれと思ってした他人への忠告が円満な社会生活の糧になる
のかといったら、そんなことは滅多にありません。相手の面子を潰し、気力を
阻害させ、恨みをかうのがほとんどです。「葉隠」ではこのことを知っていて、
細やかな配慮をすることの重要性を説いています。
 この話は、教育においてもいい教訓になるのではないでしょうか。まさに、
最近の若い子たちとのコミュニケーションのとり方、仕事の教え方、叱り方の
ヒントになります。まずは、部下の目線に降りて心を開いてあげること、そし
て、出来るだけ褒めてあげること、さらに「気づき」を与えることを説いてい
ます。
 当時の社会は、現代よりも閉鎖性が強かったと思われるので、緻密な人間同
士の「思いやり」の心をもつことが大切だったと思われます。とても荒々しい
世界が「武士道」だと思われがちですが、実はこんなにもデリカシーと人間味
のあふれる世界だということに驚きを感じます。


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【出典紹介】 
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●「葉隠」(はがくれ)
 江戸時代中期(1716年ごろ)に出された肥前国鍋島藩藩士、山本常朝の武士
としての心得について見解を「武士道」という用語で説明した言葉を田代陣基
が筆録したものです。

●「葉隠入門」(三島由紀夫/新潮文庫/1983)
 「葉隠」を“わたしのただ一冊の本”と心酔していた三島由紀夫が現代人に
書いた入門書です。彼の持論もありますが、「葉隠」の闊達な武士道精神を今
日によみがえらせ、現代という乱世に生きる私たちに“常住坐臥”の心構えを
説いています。



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【編集後記】           
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 この話を読んで、「批判の仕方」だけでなく、「人のやる気を引き出し方」
でもあると思いました。あまり詳しくはありませんが、「葉隠」には「コーチ
ング」のエッセンスもたくさん含まれてるのかなとも思えるようになりました。
これから必要な社会的能力の一つは思いやりの能力と言えますね。


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【武士道・一日一話】
  発行者:菅野 康典 (武士道勉強家)

【ブログ】 武士道・一日一話 http://nippon-bushido.seesaa.net/
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