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人と組織の悩みコラム Vol.156『北里取締役のしょっぱい涙』

配信日:2009年07月14日


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2009年7月14日号
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     人と組織の悩みが嘘のように晴れるコラム100選

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◆ 北里取締役のしょっぱい涙 ◆


「北里さん(仮名)。先日のパラゴン研修、参加してみてどうでした?」

ビールを注ぎながら、僕は何気なく聞いてみた。

すると北里取締役は、急にまじめな表情になってこう言った。


「参加して良かったです。…もっと早く30代の頃に受けていたら人生が変わっ
 ていたかもしれません。それくらい良かったです」


思いがけない真剣な表情にうろたえながら僕は、ありがたいことだと思い感謝
の意を伝えた。そうおっしゃっていただけて何よりです、と。

「実は、半分以上疑いながら参加したんですよ」と北里取締役。

トップの分身づくりを標榜する我がフェイス総研の看板商品「究極のリーダー
シップ研修パラゴン」(模範、比類なき、の意)。熱心に当研修の良さをお伝
えする当社営業マンに対して、北里取締役は興味半分、疑念半分でいたという。


「確かに興味はありましたよ。相当にいい研修だろうってね。でも、自分は変
 わらないだろう。自分は別だよ、って思ったまま実は参加していたんです」


ひとつ、どの程度の研修か見てやろう、若干、斜に構えた評論家の姿勢で臨ん
だ北里取締役は、やがて少しずつ研修にのめり込んでいく。


「1日目の360度サーベイは面白かったですね。いろいろな会社から来た幹部連
 中が初対面にも関わらずズバズバと問題点を指摘しあう。会社は違えど立場
 が 同じだからでしょうか。初対面でも結構相手のことがわかるんですよね。
 あれは痛快で楽しかった」


北里取締役も、他社の受講者に率直な指摘とアドバイスを歯に衣着せずに伝え
たという。


「あそこで一気に受講者同士の壁が崩れた。一番見られたくない自分の恥部を
 人にさらけ出したことで、たった1日で参加者同士が昔からの旧友のように
 仲良くなってしまったんです」


裸を見せあった同士の絆は固い。だから、相手の言うことを素直に聞き入れる
土壌ができたんでしょうね、と北里取締役は言う。


「自分の課題は、薄々わかっていた内容でした。しかし、ダイレクトに参加者
 から指摘されたのはきつかった。わかっているだけに、もう言わないでくれ、
 ってね」


笑いながらその時を振り返る。

そして、自らの課題の根本にあるパラダイム(世界観)を修正することで、今
後の行動変革につなげていくのだ。ちなみに北里取締役の課題は、部下や他部
署の意向を無視して「べき論」でグイグイとものごとを進めていくこと。その
根っこにあるパラダイムは「だって仕方無いじゃん」というものだった。

メンバーの不安や不満もわかる。でも売上を上げなくちゃならないから仕方な
いじゃん。他部署が動きたくないのもわかる。でもお客さんからオーダーを受
けているんだから文句言ってもしょうがないじゃん。1つひとつの内容はまさ
におっしゃる通り。間違ってはいないものの、それを正論として、べき論で押
し切ってしまうから、言われた方には感情的なしこりが残る。


「わかっていながらやっていたんですよ。だってそうしないと会社が傾いてし
 まうから。そうならないためには、いちいちそんな不満を聞いているわけに
 はいかないんですよ」


そういう北里取締役の眉間には皺が寄り、苦悶の表情を浮かべた。嫌われても
いい。会社のために。その覚悟が深く刻まれたのだろう。笑顔になっても眉間
の皺は決して消えなかった。


「だから1日目は、まあまあこんなもんかな。そういう感想でした。わからな
 かったのは2日目と3日目。リーダーシップの法則についてロールプレイン
 グをしていくんですが、なんで自分がこんなことしなくちゃならないんだろ
 う、ってイライライしながら参加していました。だって、自分は研修講師に
 なる ために来たんじゃない。リーダーシップを身につけにきたんだから。
 こんなロールプレイング、人事の奴にでもやらせればいい。僕の仕事じゃな
 い、って感じていたんです」


笑いながらそう話す。


「でも、そうじゃなかったんですね。うまくできていますね、この研修。疑問
 を感じながら3日目の朝を迎えました。そして突然わかったんです。このロ
 ールプレイングの意味が」


北里取締役の話によれば、ロールプレイング準備のために自室で宿題をしてい
たところ、突然すべての謎が解け、大きな気付きを得たのだという。そして彼
はその気付きに打ちのめされた。激しい後悔に襲われた。

パラゴン研修の参加者は1日目の360度サーベイで自らの課題をつかんだ後に、
2日目3日目に、講師役になりながら、ロールプレイングを行っていく。

だが、そこで語るのは教科書に書いてあるような理屈ではない。そんなことは
誰だってどこかで聞いたり本で読んだりして知っている内容だからだ。そうで
はなく、そのテキストに沿った自分自身の過去の体験談を交互に語りあい、体
験を例にとりながら教え合うのだ。

多くの場合、それは失敗談となって語られる。北里取締役の例を取れば、部下
にべき論を押し付け、部下から拒絶されてしまった体験談や、大切な部下を退
職させてしまった苦い思い出などが語られたという。


「そこまではわかっていたんですよ。自分の何が足りないか、ってことはね。
 だからそんなに発見はなかった。ところが、3日目の科目、『重要事項を優
 先する』の項目で気が付いてしまったんです」


その日、ホテルの自室で深夜まで宿題をやっていた北里取締役。数時間だけ仮
眠を取り、薄暗い早朝から再び準備を始めたという。準備というのは、テキス
トに沿って自分の体験談をノートに書きだすシナリオ化のことだ。

北里取締役は考えた。自分にとっての「緊急ではない重要事項」っていったい
何だろうか?フェイス総研のファシリテーターが確かこう言っていたよな。問
題の予防活動や未来への投資活動が「緊急でない重要事項」だ、と。

例えば、上司にとっての部下育成や、仲間との信頼関係づくり。例えば能力開
発のための勉強や仕事の効率化、マニュアル化などの改善活動。未来へ向けて
の職場のビジョン明確化や共有。家族との絆を深める。健康管理の活動など。

確かに、どれも大切だ。そして「緊急ではない」から疎かにして後回しにして
来たものばかりだな、と。テキストによれば、それだからこそ、それを後回し
にしてはならない、とある。他の緊急事項以上に優先して、これらを一番最初
に手帳に書きこむことが重要だ、とある。まさに自分ができていないところだ
な、と。そしてもう一回、自分にとって一番大切な重要事項は何かを考えた。

すると、それは「部下との信頼関係づくり」であることに気が付いたのだとい
う。そうか、オレは一番大切なことを一番後回しにしていたんだな。だから何
をやってもものごとがうまく前に進まなかったのか。べき論ばかりで、部下の
感情を無視して進めていたから結局何もうまくいかなかったんだ、とふと気付
いたのだという。


「そうしたらですね、小倉さん。部下に対して申し訳なくて、申し訳なくて。
 オレは今までなんてひどいことをして来たんだろうって。突然気がついたん
 です。そして、次から次に涙がこぼれてきたんです。僕は朝からホテルの自
 室で一人号泣してしまったんです。久しぶりに泣いて思い出しました。涙っ
 てしょっぱいんですよね」


その時のことを思い出したのだろう。40過ぎの男が居酒屋で再び涙を流し始め
た。

北里取締役は、そこでの気付きをロールプレイングで切々と訴えたという。そ
れまで北里取締役の心のこもらない、どこか斜に構えたロールプレイングは評
判が悪かったが、今回は違った。たっぷりと感情移入し、心から部下に詫びた
い、と訴えた彼のロールプレイングは参加者の心を打った。それを聞いた他の
受講者も全員涙をこらえることができなかったという。


「意味がない、と思っていたロールプレイングこそが実はポイントだったんで
 すね」


と北里取締役。そうなんです、うなずく僕。

究極のリーダーシップ研修パラゴンに、「強制」という文字はない。そして偉
いコンサルタントの「先生」もいない。教えてもらうのではなく、相手に教え
てあげるロールプレイングを行いながら、教えているはずの自分が一番学ぶ。
そしてその学びを受講者同士で分かち合い、指摘し合うのだ。

だからこそ、心にしみる。同じ学ぶ立場の者同士だからこそわかりあい、安心
して指摘を受けいれることができるのだ。上司や社長に何十遍言われてもわか
らなかったことが、すんなりと心に入ってくる。そういう構造で設計されてい
るのだ。

なんという素晴らしい仕事をさせていただいているのだろう。僕は北里取締役
に心からお礼を伝え、熱く握手をして別れた。

今回も素晴らしい卒業生たちが生まれた。そして気がつけば今週また次のパラ
ゴン研修が開講される。月に2回開かれる、素晴らしいリーダーたちの学びの
場。週末にはまた新しいドラマを聞くことができるだろう。今からそれが楽し
みでならない。



株式会社フェイス総研 
代表取締役社長 小倉 広



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ソメノ編集後記━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
サイモン&ガーファンクル東京公演へ行ってきました。まさか二人の演奏を生
で聞く事ができるなんて思ってもいなかったので、ええい!と奮発して一番高
いS席のチケットを手に東京ドームへ向かいました。水道橋駅は、50代のおじ
様から20代のうら若き女性までと幅広い層の人だかりでごった返しており、こ
こにいるみんなは、S&Gの歌を聞いて育ったんだなぁ、あのスーツ姿のサラ
リーマンも、子供を連れたお母さんも、ミュージシャン風貌の若者も、

“藤井○ミヤのチケット売ってください”という紙を持っている人も…

…ん?!なんと、ドームの隣では彼のコンサートが開かれているようです。さ
らに若者、女性層はガンガンとそちらに流れていき、東京ドームに向かう人達
はS&G青春ど真ん中世代といった感じです。ちなみに今回のコンサートのキ
ャッチコピーは「あれから40年…あなたは何処で何をしていましたか?」
40年前私は生まれていませんが、二人の歌から世代の壁、国境の壁、そして心
の壁までも取り払ってくれるような“優しい力”を感じました。今回のコラム
で言えば、彼らの歌は何を教えるでもなく、何かを強制することもなく、聴く
者の心を豊かにさせるきっかけを自然発生的に起こしているようです。ちなみ
に私は1曲目から号泣。これが最後だと思うと…よよよ。明日もお楽しみに〜
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