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11/03/07がんばれ社長!今日のポイント 「ありがとう、尾藤監督」

配信日:2011年03月07日

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  経営者用メールマガジン  『がんばれ社長!今日のポイント』
 
  作者: 武沢 信行  2011年3月7日号 VOL.2582 購読者:31,789名

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『ありがとう、尾藤監督』


●「踊りに行こうよ 青い海のもとへ 二人で唄おう 明るい恋のリ
ズム ・・・」

カーラジオから流れるザ・タイガース沢田研二の歌声。
1968年、14歳の夏休みに家族で海水浴に行った。車のラジオから流れ
るジュリーの声に当時若かった母はノリノリの上機嫌。中学2年の私も
小学6年の弟も夏休みを謳歌していた。(もっとも弟は車酔いで青ざめ
てはいたが)

●そこへ運転していた父が何を思ったのか、左手を伸ばしてラジオの
選局を変えてしまった。
スピーカーから流れてきたのは「ウォー」という大歓声。夏の高校野
球甲子園大会の実況中継だった。

「なによ、お父さん、せっかくいいとこなのに・・・」と母。父はい
つものように言葉すくなく「高校野球や」とだけ言った。

●しようがなくラジオに聞き耳を立てていると、箕島(みのしま)高
校の東尾修投手が投げていた。解説者がしきりに「東尾君、すごい」
と連発している。その年、初出場ながら箕島高校はベスト4まで進ん
だ。

●その秋、西鉄ライオンズ(現・西武ライオンズ)からドラフト一位
指名を受け、パリーグを代表するエースになる東尾投手。最近はプロ
ゴルファーの娘さんがタレントと結婚した。

●和歌山に箕島(みのしま)あり。

箕島高校はこの大会で鮮烈デビューし、のちに春夏あわせて四度の甲
子園全国制覇を果たす。
それは、ひとえに同校野球部の尾藤公(びとう ただし)監督の指導力
によるものと言いきっても良いだろう。

●もともとは京都の平安高校に行く予定だった東尾投手を「一緒に甲
子園に行こう」と口説きおとした。

「優勝を4回したが、ベスト4に終わった東尾のチーム(1968年)が最
強だった。それでも優勝できなかったのは自分の経験不足のため」と
語っている。

●その尾藤監督(68)が昨日亡くなった。
ぼうこう移行上皮がんだった。後輩監督が口々に悼んだ。

・智弁和歌山・高嶋仁監督(64) 
 ぼくも奈良の智弁学園から和歌山に来て、全然尾藤さんに勝てなく
 て、尾藤さんに勝ちたい一心でやってきた。今あるのは尾藤さんの
 おかげだと思っています。

・元PL学園監督の中村順司・名商大監督(64)
 あこがれの監督でした。僕が高校全日本の監督を務めた98年も選手
 選考で助けていただいた。そのとき、取材を受ける態度がよくない
 と言われていた敦賀気比の東出君(現・広島東洋カープ)を「彼は
 いい選手や。マナーは教えてやればいい」と勧めて下さった。実際
 好選手で、チームの中心でした。選手を見る目も素晴らしかった。

・帝京・前田三夫監督(61)
 私たちの目標であり、憧れの監督さんでした。「尾藤スマイル」で
 有名になられた方ですが、正直あんなに笑って試合に勝てて、いい
 なあと若いころはうらやましく思いました。それを目指してやって
 きましたが、なかなかスマイルは出せなかった。グラウンドでは優
 しい顔ですが、高校野球の姿勢には厳しい考えをお持ちでした。教
 育の一環として、常に「正しくあれ」という姿を追い求めていた。
 その心構えを教わりました。

・明徳義塾・馬淵史郎監督(55)
 大事なところで選手を信じてどっしり座り、笑顔が印象的だった。
 勝負に臨む時の顔が実にいい顔だった。こういう監督は2度と出な
 いかもしれない。

●箕島高校と79年夏の3回戦で激突した星稜高校(石川)。

延長18回の熱闘は、高校球史に残る名勝負といわれている。当時、星
稜高校の監督だった山下智茂氏(66)は、そのときの思い出をこう語
る。

「18回の激闘、出会いには感謝しかない。人生観、野球観を変えてく
れた人生の宝のゲームです。雲の上の方で僕には偉大すぎる方でした
が、その後も兄貴のように教えていただいて…」

●ちなみに尾藤監督は1966年、23歳の若さで監督就任し、スパルタ練
習によってわずか3年目の春に同校を甲子園へ導いた。
スパルタは成果があるように思えた。

だが、甲子園ベスト4のあとは成績が伸び悩んだ。そして1970年代前
半に指導法に対して信任投票があり、その結果責任をとって一度監督
を退いている。

●同校を退任したあとボウリング場に勤務し、接客業などで人間的に
学ばれた。そののち、再び乞われて箕島高校野球部監督に復帰してか
らは、選手の希望もあって練習の厳しさは変えないものの、試合中は
いつも笑顔で接するようにした。それによって選手達はのびのびとプ
レーできるようになったという。その微笑みは「尾藤スマイル」とし
て高校野球ファンにおなじみとなり、他校の高校野球指導者にも大き
な影響を与えた。

●2009年2月、その尾藤公さんが「私と箕島野球」という演題で地元で
講演されている。その内容は感動的なエピソードにあふれたものだっ
た。

・・・
1966年、23歳で母校の硬式野球部の監督になった。甲子園に行くには
名門の2〜3倍は練習しなければ追いつかないと、厳しく激しく練習し
て行き過ぎたこともあったと思うが、ある意味で生徒に恋し、恋愛を
していたようにも思える。子どもたちが何を考えているのか知りたか
ったし、自分の気持ち、何を考えているかも知って欲しい、という気
持ちでいっぱいだった。

 また、野球は、ボールがゴールに入って得点するサッカーやバレー
ボールなど他の球技と違い、人が塁を進み本塁に入らないと得点が入
らない独特な競技。そのため、バンドが重要な役割を果たす。仲間を
次の塁に進め、チームの勝利のために自分の打ちたいという気持ちを
抑え、犠牲バンドをする。そうした「フォー・ザ・チーム」の精神が
必要だ。
バントの心は、「おかげさんで」や「感謝」につながり、ひいては、
「家族や地域や、国や世界、地球のために何か役に立ちたい、貢献し
たい」という心につながっていく。

 1979年夏の星陵高校戦、1点を勝ち越され延長12回裏2アウトで無走
者になったとき、ぼく自身が「もうおわり」と試合をあきらめかけた。
負け試合の監督インタビューを考え出したそのとき、最終バッターの
嶋田宗彦選手がなぜかベンチに戻って来た。
そして突然、「ホームランを狙ってもいいですか!」と大きな声で聞
いた。
そのときは、「ホームランなんて言って、打てなければチームのみん
なに大恥をかくのに何を言っているんだ」と発言の意味がわからなか
った。しかし、すぐにハッと気づいた。

 彼は、キャッチャーで守りの要で洞察力もある男。
いつも「最後の最後まであきらめるな」といっている私が、弱気にな
って試合をあきらめているのを、以心伝心、気づいていたのだ。彼は
監督とチームに「元気を出せよ!」「まだ終わってないやないか」と
喝を入れに来たのだと。

 こんな状況で喝を入れること自体すごいことだが、嶋田選手は有言
実行、実際にホームランを打ってチームの絶体絶命のピンチを救って
くれた。まさに神がかりだった。
選手からの喝で目が覚めた私は、18回までたたかう闘志を取り戻した。

 延長18回の激戦を制したあとの宿舎でのミーティングでは、選手た
ちが正座して号泣していた。私も言葉にならなかった。
選手たちは泣きながらも目はきらきらと輝いていた。選手と私が心で
通じ合っていることを実感した。そのチーム一体感のなかで、準々決
勝、準決勝、決勝と勝ち進むことができ、春夏連覇につながった。
・・・

●高校野球関係者だけでなく我々に与えた影響は計りしれない尾藤公
監督。ご冥福をお祈りいたします。


<参考>

※日刊スポーツコム
 → http://www.nikkansports.com/baseball/highschool/news/p-bb-tp3-20110307-745590.html

※和歌山放送社長ブログ
 → http://wbs-ceo.sblo.jp/article/26769817.html


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