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コンサル出版!『著者は選ばれるのか、選ばれないのか』第181号

配信日:2011年02月09日

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《今週のCONTENTS》

1.『著者は選ばれるのか、選ばれないのか』

2.編集後記

3.【経営コンサルタント独立開業講座】4月開講のお知らせ

4.おすすめ経営セミナー(2/24 東京)
 「小さい会社のための、今すぐ低予算でできる新規事業とは?」

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おはようございます。
北国の大雪に、南の国の噴火と、天変地異とはこういうことかとい
う今日この頃です。

そして、かたや世間じゃ八百長メール問題、地球も人もいろいろあ
るなあと思っている本多泰輔です。

国会冒頭の総理の所信表明演説で、菅総理が「6月をモクトに」と
言ってるのを聞いて、メドなんじゃないのと思ったんですが、一向
にマスコミは読み間違いを追及する気配がない。

なんでかなと思ってたら、目途はモクトと読んでもOKなんですね。
知りませんでした。メディアもそこまで間抜けじゃなかったんです
ね。

でも普通、目途を「モクト」と読んだら訂正されますよね。

わざとモクトと読んで、それでメディアが騒いだら、目途はモクト
とも読むんだ、とやり返すつもりだったのでしょうか。

所信表明演説でトラップを仕掛けるなんて、余裕があるもんです。
その余裕をほかのことにつかえばと思います。

さて、先月『逮捕されるまで─空白の2年7カ月の記録』(市橋達
也著/幻冬舎)が発売されました。けっこうな売れ行きみたいです。
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4344019415/consulgent-22/ref=nosim

このメルマガでは、本はだれが書いてもいい、たとえ犯罪者が著者
でもいいと何度も言ってますから、この種の本が出版されることに
異論はありません。

ただ、なぜこの時期に出版するのかというのは、ちょっと訝しく感
じるところがあります。

はっきり言って、この本が出なければ、ほとんどの人は市橋被告の
事件のことは、言われれば思い出す程度に忘れていたでしょう。

忘れていたからこそ、それはそれでセンセーショナルだったのです
が、それでもこのタイミングがベストとは思えません。
その理由はふたつ。

ひとつは裁判制度との関係。

彼の裁判は裁判員裁判です。裁判員が本書を読む確率は極めて小さ
いですから、本自体によって何らかの予断が差し挟まれることはゼ
ロでしょう。しかし、現実にそうであったように、ワイドショーや
週刊誌では、そのサバイバルの風景を詳らかに報道します。

八百長メール問題が出てこなければ、いまでもまだやっていたかも
しれません。

そうしたマスメディアの報道は、断片的であっても裁判員になる人
の目に触れ、耳に入る機会を飛躍的に高めるでしょう。

もちろん、それはわかって出版しているはずなので、その意図が何
なのか大いに気になります。

いやあ、それはいつもあんたが言うとおり、本が売れなきゃ出版社
は食っていけないんだから、ここが売れる時期と踏んだから出した
んでしょ、と言われればそうなんですが、いまが売れるタイミング
として最適かというと、そこも疑わしい。

前述のように、市橋被告の事件は、本が出るまで忘れられていたわ
けです。ただ、非常に世間の注目を集めた事件ですから、何かあれ
ば思い出す。おそらく裁判が始まれば、再び日本中の耳目を集める
でしょう。

そして、連日にわたり裁判員裁判の動向は逐一報道され、日本中の
関心が一審判決に集まる。ならば、その直後に発行するのが、本来
は最もベストな出版のタイミングであろうと思います。裁判員にも
影響を与えることもありませんし、販売部数も伸びる。

なぜ、わざわざ発行のタイミングを前倒しにしたのか、訝しく感じ
ます。


■特異な体験は貴重な体験

別に犯罪でなくても、常人には体験できない珍しい体験は、それだ
けで本になる要素といえます。

顕著なところでは、チリの鉱山から奇跡の生還をした人の体験がそ
うですし、人ではないですが探査ロケット「はやぶさ」の生還も同
様です。

凄いなあ、大したもんだなあという出来事の内側をのぞいて見たい。
そういう好奇心は本能的なものですね。そしてそれは、ひどいなあ、
とんでもないなあという事件でも同じなのだろうと思います。

では、ビジネス書では特異な体験というのは貴重な情報でしょうか。

経済疑獄事件や会社の不祥事など、ビジネスに関する大事件はある
ことはありますが、だいたいこうした事件モノは、ビジネス書が扱
うテーマではないと見られておりますから、出ても一般書扱いにな
ってしまいます。

ビジネス書で特異な体験というのは、会社が倒産、何年か連続して
トップセールスだったなど、なかなか体験できないことではあるも
のの、もの凄く珍しいことはありません。

倒産して夜逃げをした体験とか、債権者に地の果てまで追われて、
本当にマグロ漁船に乗った体験とか、そこまでディープな話だとち
ょっと興味をそそられますが、あんまりディープな本だと、やはり
ビジネス書には位置づけられなくなってしまいます。

トップセールスの記録保持者が、本人の企業秘密をとことん公開し
てくれているような本は、内容はディープであってもビジネス書の
範疇には収まりそうです。

よく笑顔のつくりかたが、この種の本にはノウハウの一つとされて
いますけど、毎朝鏡を見て笑顔の練習、というくらいだといまいち
新鮮味がないので、通勤電車の窓に映る自分の顔で笑顔の練習をし
たとか、街のショーウィンドウで練習したとか、他人から怪しまれ
るくらいの経験談が欲しいですね。

他人から怪しまれたという体験も、まあ特異な体験でしょうか。


■その人なりのオリジナリティ

しかし、読んでてそれで面白くても、それが参考になるかとなると
疑問符がつきます。自分にとって役に立たない本でも、面白ければ
OKか。ここはむずかしいですね。

むずかしいので、普通のビジネス書、なんらかの役に立つビジネス
書の話に戻ります。

さて、ビジネス書では、そんなに極端な特異性は発揮できないよう
ですが、その人なりのオリジナリティと共感が求められます。

人と違うことをやっているのに共感とは、矛盾しているように思え
ますが、なるほどそうか、というのは共感の賜物です。ですから、
その人独自のものではあっても、その人にしかわからないことだと
読者は受け止めてくれません。はっきり言うと受取拒否です。

なので、やっぱり適度なオリジナリティと共感性が必要なのです。
オリジナリティと共感性、どっちが大事かといえば、共感性です。

ご理解いただけることが第一で、オリジナリティは控えめな主張で
いい。しかし味の決め手は、隠し味、スパイスですから、オリジナ
リティがないと味気ないし際立つものがありません。

絵画と額縁みたいなもんでしょうかね。

主と従の関係は、はっきりしているのですが、時として従が主の価
値を決めることがある。企画にオリジナリティを求める理由の一つ
は、そういうことだと思います。


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